Lightly by Cindy-Lee Davies

[Intro]
「機能性」と「工夫」をキーワードにおうち時間の充実を図る製品を開発しているメルボルン拠点の会社 Lightly。Cindy-Lee DaviesはLightlyのデザイナーであり、ディレクターです。用途と色彩の双方に豊かさが際立つDaviesのデザインですが、その中核にあるのは「長い人生」や「親密な人間関係」などといったテーマ。普遍的な理念をしなやかに落とし込んでいる彼女のデザインプロダクトは、オーストラリア内外で顕著な人気を示しています。彼女の偉業によって、Lightlyは工芸の世界でオーセンティックな製造者として一目置かれるようになりました。
[Beginnings]
Daviesは、オーストラリア西部の28㎢ある畑で、三人兄弟家族の中で育ちました。子供時代の「実用的な工夫」は、デザイナー・職人になるために必要不可欠な取組だったと彼女は振り返ります。
「田舎で過ごした子ども時代が、今の私をつくっています。」
「小川の溝で土の彫刻をつくったり、12歳の頃から兄と金属を溶接したり… 気づけばいつも何もないところから何かを作っていました。」
このような物づくりに対するこの実践的なアプローチは、のちにLightlyの根底に潜む価値観と密接に結びつきます。
「創造力を培う余白と天然資源がいつもすぐそこにあった」Daviesは思い出すように語ります。子ども時代に育んだ冒険心が、ブランドの核にある価値として開花したのです。
Daviesにとって、祖母 Rosemary Lightlyの存在は偉大でした。会社の土台となる価値観を形成するのにも大きな影響を与えています。はじめのうちは祖母のオマージュをしていたと言うほど、祖母の存在はブランドにとって必要不可欠な要素になっていることが、Daviesの言葉から明らかになっています。
「祖父母との愛情に溢れる思い出がたくさんあって、そこから人との関係性というものをビジネスの中でも重んじるようになりました。例えば、職人たちのコミュニティは、製品の質とそれを保つための製造を確実なものにしてくれる。一方でカスタマーサービスのチームは、お客様が今何を欲しているかを汲み取り、管理してくれる。私たちは関係性の中に身を置くことで、何が大切かを知ることができます。」Lightlyという会社名が祖母の旧姓からきていることも、愛と敬意の表れであることは自明です。
Daviesがはじめての作業場を持つようになったのは19歳の頃。金属屑の製造場を使った素朴な場でした。この頃 Daviesは日本のインテリアデザイナー、倉俣史朗の著書に出会いました。そこから彼女は家具・デザインに強烈な関心を抱くようになり、ロイヤルメルボルン工科大学のデザイン科に入学しました。Lightlyを創業する以前、Daviesは家具や照明デザインの領域に特化してキャリアを積み上げていました。FlosやFontana Arte等といった名だたるイタリアのブランドや数多くの建築家に対して、照明のスペシャリストとしてコンサルティングを行ったり、時には映画の照明担当にも任命されるほど、その才を多岐に渡って活かしていました。そののち、2005年にDaviesは独立し、Lightlyを設立しました。彼女のデザインが人気上昇していった中での独立だったので、このキャリア変遷は「ごく自然な流れ」だと、彼女自身そう述べています。
[Design Philosophy]
Lightlyというブランドにとっても重要なことは何か、Daviesは自覚的でありました。関係性、才覚、機能性、長寿、充実。これらの基本的な価値が経営デザインの中心に添えられています。Lightlyの幅広いインテリア製品は、新鮮な活力と思慮深く革新的なセンスをもって、これらの価値を反映しています。
Lightlyの作品にある一つひとつのデザインを支える柱となっている「操作性」について、Daviesはこのように言及しています。「誰かのおうちで長い時間生き続ける高品質な製品をつくることは、流行りに乗ることよりも、そしてもちろん過剰生産によるゴミ処理地に葬られることより余程尊いです。」Daviesはこのようなサステナブルな家庭用品デザインへの考えを「シンプルな実用主義に宿る美しさへの強調と、個人として心から表現を施すことへの欲求」と称しています。
色彩と形状がDaviesのデザインの根幹を担っていることは「Second Nature」や「demure Goblet」「Tone Planters」などといった彼女の代表作からも見受けられる。
「色彩と形状は、ウェルビーングと調和をデザインに落とし込みたいという野望を叶える上で重要な要素です。
「私たちは、色が持つパワーに日々気付かされています。色は、まっさらなところに命を吹き込み、絶え間ない変化を可能にし続けます。思い出をつくることだってできる。」
ヴィヴィッドな紺碧から、淡い黄色に素朴な赤、涼しいエメラルド色まで、Lightlyのカタログに映る色彩は「遊び心がありながらも優雅な貫禄」を見せながら「独自性を持ちながら時代を超越し続けるデザイン」として人口に膾炙しています。
「人との関係性」はLightlyの会社理念の中心にあり続けます。経営スタイルに大きな影響を与えた祖母との関係性以外にも、Daviesはデザイン志向の小さい企業を運営する上でに必要となってくる「つながり」を常日頃から重んじています。Lightlyは長い間、同じ工場と仕事をし続けています。このような存在も「ローカルファミリー」だと彼女は触れています。デザインは100%オーストラリアでなされていて、最近では他にもアジアの沖にある小さなメーカーなどと製作過程を共にしています。Lightlyを構成するメンバーは少ないですが、少人数ならではの親密な関係性も自然と施されています。ランチをしたり、1ヶ月に一回ほど地元のコーヒーショップや食堂に行ったり、瞑想やヨガを一緒にしたりと、そこには親密ながらも開放的な雰囲気があります。
[Inspiration]
Lightlyのデザインを考える上で、Daviesにとって欠かせない要素が「健康とウェルビーイング」です。経営者としても、デザイナーとしても、一度も忘れたことのない側面だと、彼女は振り返ります。自転車にヨガ、瞑想と休日もマインドフルで活発なDaviesですが、彼女にとって「健康、ウェルビーイング、そして自然環境との調和」こそがLightlyを運営していく上で最も高い価値を置いている要素だと言及しています。
Daviesは、オーストラリアのミッドセンチュリーメーカーにデザイン面で影響を受けていますが、他にも世界中を旅することが多大なるインスピレーションだと述べています。「世界を旅をして、私はいつもデザインと製作における新しい地平線を捜しています。」

[Process]
発端からリリースまで、Daviesは新製品のプロダクションのほとんどの段階で大きな役割を担っています。メルボルンのCollingwoodという場所にあるLightlyのスタジオでは「すべて」が起きています。このスタジオは、お店、製作所、倉庫、撮影スタジオを兼ねた、オールインワンの現場です。組み立て作業やインボイス作成、発送準備などが日常的に行われており、残りの時間を使って新たなプランニング、デザイン、そしてマーケティング戦略が拵えられています。